『コンビニ人間』はレビューと共感を拒否する物語だと思ったこと
遅ればせながら『コンビニ人間』を読んだので感想を共有したいと思う。
読み終わってからAmazon等でレビューを見てみたのだけれど、どれもこれも的を射ていないように感じた。そして、私が何かレビューをしたとしてもこの作品の的を射ることができるとは到底思えなかった。
そういう意味でこの作品は「レビューと共感を拒否する物語」であると思った。
病名を押し付けてくる「普通」
例えば、「主人公は自閉症を患っていると思われるが、思考回路が自閉症のそれとは逸脱している」という意見があった。この物語には "「普通」って何?" という問題提起が根底にあると思われる。それは作品中で普通という言葉が「カギ括弧」で囲われて書かれていることからもわかる。
当該レビューにある「自閉症」というのは「普通」の人間が定義してカテゴライズした名前に他ならない。作中では主人公が「普通と違う」ことが仄めかされはするものの、間違っても「自閉症」なんて言葉は出てこない。
従って、「自閉症の思考回路から逸脱している」というのは批判になっていない。むしろ、外側から「自閉症」とタグ付けして、わかったような気になっているに過ぎず、それは危険なことなのではないかと思った。『コンビニ人間』はどちらかといえばタグ付けの話ではなく、多様性の話であると思う。
共感を望まない物語
また、「救いになった」というポジティブな意見も多数見られた。もちろん、作品に対して感想を持つことは自由であり、その感想に対して感想を述べることはできても、誰もその感想をねじ伏せることなんてできない。共感したのであればそれが全てだ。
但し、『コンビニ人間』は本質的に共感が拒否されるように設計されていると感じる。物語は主人公の一人称で語られるが、周囲の人間と違う変わり者であることが冒頭から大いに示唆されている。
主人公の彼女は世界に一人だけの生きている人間として提示されている。「普通」でないのにその症状に名前が付けられないのもそのためだろう。強烈な個性を持っており、誰かに共感されても喜ばないであろうパーソナリティーを有しているように見える。彼女の世界は彼女の中だけで完結している。
従って、彼女やこの物語に共感するのは自由だけれど、彼女やこの物語は共感されることを望んでいないように感じるのだった。「ふーん、そういう人生なのね、頑張ってね。今度客としてコンビニに買いに行くよ」くらいの距離感がちょうどいい気がする。
とは言っても、この感想も「普通」の人間による「普通」の押し付けに過ぎないのだろう。ジレンマだ。
白羽という男に爆笑
物語の中盤から白羽という男が出てきて、こいつが絵に描いたようなクズで、ものすごい嫌悪感と暴言を1ページことに剛速球で投げつけてくる。あまりにも言っていることがめちゃくちゃであり、呆れを通り越して爆笑できる。
このめちゃくちゃっぷりを目の当たりにするためだけでも読む価値があるように思う。私は「あーいるいるこういう屁理屈クソ野郎」と思いながら自分を省みることとなった。
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私もこの1か月以内に確か読んで投稿したと思うのですが、共感できませんでしたねー。確かに普通って何?って問う話なのですが、何だか胸がスッキリしないような後味良くない感じでした。
そして白羽…。クズっぷりデタラメでしたね。それも嫌悪感の一つだったと思う。
主人公も白羽もかなり異端の人物でしたね。読む前はこんな話だとは思いませんでした。
それでも私なりにおもしろく読めました。
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