ブロックチェーンベースのメディアで記事の削除は可能なのかsteemCreated with Sketch.

in #japanese7 years ago

イメージはいらすとやより

情報の賞味期限から見た Steem と ALIS への期待の最後に触れた、ブロックチェーンベースのソーシャルメディアにおいて記事の削除は可能なのか否かについて、考えをまとめたいと思います。

まず、Steem のようにブロックに投稿された記事を平文で保存している場合を考えます。そして、ブロックが公開され誰でもネットワークに参加できるとします。この場合、ネットワーク参加者はブロックチェーンのコピーを手に入れることが可能で、コピーは世界中に無数に存在します。

このような状況では、記事を削除することはほとんど不可能です。ネットワーク参加者にある記事を削除するよう依頼したとして、無数のブロックチェーンコピーから当該の記事が削除されたことを確認する方法はありません。もし仮に、ネットワーク参加者がみんな正直者で、削除すべき記事を実際に削除してくれれば良いのですが、そんなことは期待できないでしょう。ましてや炎上記事を削除しようとしている場合、削除に従わず拡散するような悪者は必ず現れるでしょう。

ネットワークが公開ではなく、何らかの信頼できるグループのみがブロックチェーンにアクセスできる場合、もしくはプライベートネットワークであるならば、削除は可能です。逆に、ネットワーク参加者が限られている場合は情報漏洩問題になりかねないので、削除依頼は適切に処理されることが期待できます。ただし、この場合は検閲に強い、透明性があるといったブロックチェーンベースのメディアが持っていたメリットは失われてしまいます。

では、暗号化した記事をブロック内に保存するというのはどうでしょう。投稿者が暗号化しておき、読者は復号して読む。この仕組みならば、ブロックチェーンのコピーから当該記事を削除できなくても、復号鍵さえ削除できれば記事の内容は守れます。

この方式は、完全に分散化された環境では上手く行きません。復号鍵をどうやって読者に渡すのかという鍵配送問題だけでなく、鍵管理を任せるほど読者すべてを信頼すべきではないからです。

しかし、信頼できるステークホルダーの参加を許せば上手く行きます。まず投稿者は記事を暗号化してブロックに保存します。そして、復号用の鍵をいくつか作り、投稿者が信頼できると思ったメディアサイト、例えば Steemit や Busy に渡します。メディアサイトは、預かった鍵の管理と削除の責任を負います。読者は、投稿者が信頼しているサイトのどれかにアクセスし、そのサイトが預かっている鍵で復号化した記事を閲覧できます。

ブロックチェーン技術が公開されていれば、メディアサイトは任意に立ち上げることができます。もし、あるサイトが検閲を始めた場合、他サイトに切り替えることで検閲を回避できます。また、匿名サイトではない場合に限ると思いますが、メディアサイトには、個人情報保護法を使って適切な鍵管理を求めることができるかも知れません。

なお、投稿者がメディアサイトに渡す鍵は、すべての記事に対して共通でも良いですし、記事ごとに変わっても構いません。放送暗号のように一つの暗号鍵に対して複数の復号鍵が作れる暗号方式を用いれば、メディアサイトごとに異なる鍵を渡すこともできます。その場合、もし鍵が流出すれば犯人が特定できるでしょう。

まとめると、信頼できるステークホルダーの参加を許さず、完全に分散したメディアサービスでは記事の削除は難しいでしょう。しかし、いくつかのサイトを信頼するという方式では投稿した記事を閲覧不可能な状態にできます。例えば、Steemit の場合、サイト側がウォレットの鍵も持っていますし利用者は Steemit を信頼しているはずなので、ここに記事閲覧用の鍵が加わったところで問題ではないと思います。

最後に、暗号技術の信頼性の話を少しします。先に述べた提案では、暗号化した記事をブロックチェーンに保存しています。そこでは暗に、暗号技術は破られないことを仮定していますが、実際には暗号解読技術も日々進歩しているため、ほとんどの暗号はいつかは破られます。少し前の Wifi は暗号化技術として WEP を使っていましたが、解読が進んだため今は WPA2 が使われています。その WPA2 にも先日脆弱性が見つかり話題になっていました。このように、ある暗号化技術はいつかは破られ、新しい技術が使われるようになり、また破られ・・・、と繰り返しています。しかし、ブロックチェーンのように削除困難なデータベースへある暗号方式で書き込んでしまうと、解読された場合に対処できません。そういった意味では、結局のところ、漏洩して困る情報はブロックチェーンには保存しない方が安全だと思います。(ただ、海千山千のブロックチェーン関連サービスでは、解読されるよりも前にサービスが潰れる可能性の方が高いような気がしますが・・・)

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これ私も難しい問題だと思い、Steemitへの投稿は特に気をつけています。ただ、従来のブロックチェーンベースでなく分散型でないウェブサービスでもGoogleのクローラー、Web archiveはじめいろいろなサービスに保存されてしまい完全削除は難しいのかも。

どこのサービスに保存されているのか分かっていれば最悪訴訟という手段も取れるのですが、不特定多数に拡散されていくと手に負えなくなります。いろんなサービスの連携がどんどん進んでいますし、ネットへの投稿は気をつけ過ぎることはないですよね。