NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)の目的について
○NTT法の目的から電気通信技術に関する研究を削除すべき理由
NTT法の目的は、「1.電気通信役務の提供」および「2.電気通信技術に関する研究」だ。持株会社の研究所を全廃して、NICT(基礎研究)および事業会社(応用研究)へ研究を移管すべきであると内部告発者が考える理由を示す。
○特殊会社の資産・業務はシンプル・最低限
信用ならない以上、預ける資産および任せる業務は必要最低限にしておくべきだ。信用ならない巨大組織の運営を監査・監督するコストは計り知れない。全国一律に最低限の電気通信サービスの品質を維持するため、「1.電気通信役務の提供」は残さざるを得ない。
○御用学者による中立・公正な原価計算と料金算定
自由競争になじまない事業分野をスコープとする特殊会社の性質上、御用学者による中立・公正な原価計算が必須になる。内部告発者の懸念は、原価計算上のコストと実コストの差分。NTTに限らない、全ての特殊会社に共通する終わりがない課題だ。
NTT法の目的である「1.電気通信役務の提供」に関する制度設計はユニバーサルサービス制度がオープンになっている。中立・公正な運営が実現しているのか否か、内部告発者は判断できない。泣いているのか、不当利益を享受しているのか、トントンなのか分からないが、御用学者が原価計算して中立・公正に費用負担を割り当てる体裁がオープンになっているだけまともな制度。
設備投資は、「ハード代金+業者工事費+建設工事費(社員人件費)」から構成されるが、御用学者はどこまで実コストを追えるのか不明だ。NTT法の目的に「電気通信役務の提供」を残さざるを得ない以上、国民にできることは、ユニバーサルサービス制度の運営適否の監査・監督を徹底することだけだ。
もう一つの目的である「2.電気通信技術に関する研究」に関して、オープンな制度設計を見つけられない。中立・公正に費用負担を割り当てる制度設計が埋め込まれているに違いないが、ブラックボックスに見える。なぜなら、中立・公正な費用負担が制度設計に含まれてなければ、NTT法の目的に「2.電気通信技術に関する研究」を含める必要がないからだ。
内部告発者の入社当時、日本育英会奨学金の返済が免除される研究分野(基礎研究)があり、研究成果の開示義務が課されていた。少なくとも当時は、国立研究所と同等の建付けだったろうと想像する所以である。公金による直接的な補助があったかもしれないし、電気通信サービス料金に上積みされていたかもしれない。当然、原価計算、および料金算定は御用学者だ。
現在、持株会社の研究費用は事業会社から持株会社への上納金に含まれているので、最終的にエンドユーザーが負担していることになる。配当とは別に支払われており、事業会社が要望して利用する特定の研究成果に紐付けられた個別ライセンス費用と、要望有無に関係なく事業会社(東、西、コム、ドコモ?、データ?)に割り当てられる一括費用に分けられる。
「2.電気通信技術に関する研究」について、改めて懸念を整理する。中立・公正な費用負担が制度設計に持ち込まれてなければ(持株会社の研究開発費用の実コストを事業会社が費用負担するだけ)、NTT法の目的から不要な「2.電気通信技術に関する研究」を削除する。この場合、内部告発者の懸念は杞憂だったことになる。但し、俄かには信じがたい。資本の原理原則上(自己増殖の極大化)、特殊会社が拾えるお金を拾いに行かないことはあり得るのか?
中立・公正な費用負担が制度設計に持ち込まれている場合、ブラックボックスの制度設計がオープンにされねばならない。原価計算上のコストと実コストの差分を監査する制度はあるのか?上納金には総括原価方式による利益を積んでないか?事業会社の上納金が原価計算上のコストで算出されていた場合、実コストとの差額は、持株会社の不当利益にならないか?事業会社の独占・寡占状態の電気通信サービス料金は、上納金相当額(一括費用分)が上積みされてないか?錬金術の一例でしかないが(妄想しただけで実効性は未確認)、より洗練された方法があってもおかしくないだろう。オープンにできない制度設計であれば、目的から「2.電気通信技術に関する研究」を削除して、NTT持株会社の研究所を全廃しなければならない。
○研究開発成果の開示
現在、成果は国民に過不足なく還元されているのだろうか?オフィシャルサイト上、「NTTでは、電気通信ネットワークの接続に不可欠な技術をはじめとした研究開発成果を、原則としていつでも適正な対価を前提に技術開示を行います」とある。中立・公正な費用負担が適用されている成果は無償で国民に開示されてしかるべきだろう。
○おまけ(第三者機関の設置)
NTT法において、総務大臣は、NTTに対して、監査、監督、および報告させる大きな権限を持つ。総務省からだけでも、5人の天下り(内、1人は渡り)があるのは、5人相応の大きさの特殊資本の溜池があるからだろう。総務省本体には電気通信産業の振興のみを残し、規制、および監督は第三者機関を各々設置することが総務省改革の第一歩だ。
○関連リンク
ユニバーサルサービス制度
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/universalservice/
研究開発成果の利用
https://www.rd.ntt/use/